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米国メディア界にも蔓延するセクハラ Divided States of America/アメリカ「断」衆国 その断層の実像③

財務事務次官によるセクハラが日本で大きな問題となったことは記憶に新しいが、ジャーナリストがセクハラ被害にあう事件は海外でも起きている。米国では今年初め、メディア業界でのセクハラについて初めてのまとまった調査が発表された。きっかけは、あの #MeToo運動である。(池 純一郎)

筆者が在籍するコロンビア大学には、毎年ピュリッツァー賞発表の舞台となる名高いジャーナリズム学科がある。アイビー・リーグでは唯一のジャーナリズム学科で、教師陣には米国の主要メディア元幹部やピュリッツアー賞受賞者がずらりと並ぶ。

『コロンビア・ジャーナリズム・レビュー』誌は、ここで年2回発行される雑誌だ。現在はオンライン記事に力を入れ、著名なジャーナリストやニュースキャスターが寄稿者に名を連ねている。

去年の暮れから今年初めにかけて、この雑誌が「ニュースルームのセクシュアル・ハラスメント」と題する特集を相次いでサイトに掲載した (Neason, 2018)。他の記事と比べて5倍以上の分量がある長大な特集である。「ニュースルーム」は、新聞社・放送局で記事の執筆やニュース番組の制作が行われる「ニュースの制作現場」を指す。

調査のきっかけは、昨年10月に明るみに出たハリウッドの大物プロデューサーによる深刻なセクハラ被害だった。このニュースが注目を集め #MeToo運動が米国で大きなうねりになろうとしていた頃、同様の問題が自分たちの業界でも起きているのではないかと考えた『レビュー』誌は、メディア企業におけるセクハラの実態調査を開始。米国とカナダの新聞社や放送局、オンライン・メディアで働く300人超から直接回答を集めたという。

コロンビア大学ジャーナリズム学科が入る「ピュリッツアー・ホール」
コロンビア大学ジャーナリズム学科が入る「ピュリッツアー・ホール」
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