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[新型肺炎FactCheck] 台湾の報道を「患者の多くの肺が線維化」と誤訳した情報が拡散

[新型肺炎FactCheck] 台湾の報道を「患者の多くの肺が線維化」と誤訳した情報が拡散

台湾のテレビ放送の画像を使って「新型コロナウイルスに罹患した患者の多くが肺を繊維化。生存率は肺癌より低い」という情報がツイッターで拡散した。実際の台湾の放送は、そのような内容ではなく、事実と異なる情報だった。(池雅蓉)

 

チェック対象
日本では絶対報道されません。拡散希望です。「新型コロナウイルスに罹患した患者の多くの肺が繊維化。生存率は肺癌より低い」
(Twitterで、2020年3月12日投稿)
結論
【誤り】根拠として示された台湾のテレビ番組では、実は「必ず特異性肺の線維化になるわけではない」と指摘しており、「生存率が低い」についても、あくまで合併症がある場合と説明していた。

検証

まず、この投稿(リツイート4300超)の画像の内容を、池(台湾出身)が調べたところ、台湾のテレビ局「東森新聞」の時事討論番組「這!不是新聞」が2月25日に放送した内容だとわかった(動画)。

関係する部分の文字起こしは、以下のとおりとなる。

(動画の18:18ころ)
女性キャスター 「黄明賢医師は、『特異性肺の線維化がだんだん深刻になると、生存率は肺がんより短いと言われる。もし4、5年内悪化すれば、死ぬかもしれない』(原文:特異性的肺部纖維化會越來越嚴重,有人說存活率比肺癌還短,表示它大概四五年以內,若是持續惡化的話,可能會造成死亡。)と言っている。この黄医師は、新型コロナウイルスは肺がんよりも肺に悪いということを意味しているのですか。

台湾大学病院の小児感染科の医師李秉穎氏 「後遺症が残るという意味ですね。もし後遺症が残れば、他の合併症も出てくるかもしれないので。この生存率がより短い意味は、合併症が出る場合です
(原文:意思是他可能留下後遺症,有後遺症的話有可能會併發其他併發症。存活比較短的意思是發生併發症)

・・・(中略)・・・

(動画の20:43ころ)
薬理学家の潘懷宗氏 「一つ補足しますが、黄明賢医師が言った特異性肺の線維化は、病名です。この病気になったら、肺の線維化が続きます。彼が言いたいのは、『もし、あなたが特異性肺の線維化という病気を持っている人なら、生存率は肺がんより低い』という意味です。でも、新型コロナウイルスに感染すると、必ず特異性肺の線維化になるわけではないのです。
(原文:我補充一下,黃明賢醫生講的特異性肺部纖維化是一種疾病,這種疾病會使肺部一直纖維化。他的意思是,如果你是特異性肺部纖維化的人,存活率會比肺癌低,但不是得到新冠肺炎之後,你的肺就一定會特異性纖維化。)

このように、この番組では、誰も「新型コロナウイルスに罹患した患者の多くの肺が線維化する」あるいは「生存率は肺癌より低い」という主張をしていなかった。

実際、肺癌の場合、病期によって5年生存率は違う。国立がんセンターが公表した最新の統計資料によれば、ステージ1の5年生存率は71.2%で、ステージ4は4.7%である。4ステージ合計の5年生存率は36.3%である。

他方、新型コロナウイルス感染症の場合、4月5日現在、日本におけるPCR検査陽性者数は3271人で、死亡者数は70人である。つまり、致死率(死亡者数/感染者数)は約2.14%であり、生存率は90%以上である(厚生労働省サイト)。

現時点でCOVID-19の致死率は確定していないが、日本の死亡者数を見れば、「肺癌の生存率より低い」という可能性は考えられない。

結論

以上のとおり、ツイッターで紹介された台湾のテレビ番組では「新型コロナウイルスに罹患した患者の多くの肺が線維化。生存率は肺癌より低い」と言っている事実はないから、「誤り」と判定した。

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