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[新型コロナFactCheck] 「FAXの制約で東京都内の感染者数は1日300人を超えない」との情報は誤り 中国で拡散

[新型コロナFactCheck] 「FAXの制約で東京都内の感染者数は1日300人を超えない」との情報は誤り 中国で拡散

中国のSNSで東京都の新規感染者数は「FAXの機能制限で1日300人を超えない」との情報が拡散した。しかし、情報源とされた報道は、FAXで患者の情報を収集することが時間がかかるという問題しか触れていない。東京都の感染者数は300人を超えた日もあり、この情報は誤りだ。(池雅蓉)

チェック対象
「……(前略)日本はFAXを使って感染症患者人数を数えている。東京都新型コロナウイルス感染症対策本部にはFAXが2台しかない。1台のFAXで1日150人までの資料処理に限られているので、これまでの東京都内の感染者数は1日300人を超えていない……(後略)」
中国版SNS微博=原文は中国語=、2020年7月22日投稿)

結論
【誤り】この投稿の情報源としての番組には、FAXの機能により処理能力が限られることは言及していないし、東京都の感染者数が300人を超えた日もあった。

中国のSNSの微博(ウェイボ)で87万人以上フォロワーを持っている「微博日本」というアカウントから、東京都の新型コロナウイルス感染症対策本部には「FAX機が2台しかない。1台のFAXで1日150人までの資料処理に限られているので、これまでの東京都内の感染者数は1日300人を超えていない」との情報が拡散した。

投稿にはテレビ朝日のニュースのスクリーンショットが添付され、8月12日の時点で4600回以上シェアされている

2020年7月22日の微博投稿

この投稿が根拠としたテレビ朝日「報道ステーション」のニュース(7月20日放送)は、東京都の医療機関がFAXで「新型コロナの発生届」を保健所や地方自治体に送り、患者の情報を収集していると報じていた。

このニュースでは、最近感染者が増加したことを受け、東京都の新型コロナウイルス感染症対策本部のFAXは1台から2台に増やし、以下のようにFAXで情報をまとめている現状を説明した。

東京都の担当者は新規感染者が300人を超えたら、今のように感染経路の内訳などを細かく発表するのは無理ではないかという悲鳴が上がっている

現場の医師も取材を受け、字が薄いときは保健所と確認のやりとりも必要で、時間がかかるとの問題も取り上げられた。

確かに、FAXで患者数を数えているやり方に問題はあるが、テレビ朝日のニュースは1台のFAXは1日150人以内の処理に限られる」との内容は言及していない。ニュースで紹介された東京都の担当者の発言も、1日300人を超えたら「感染経路の内訳などを細かく発表する」ことが難しくなるというだけで、新規感染者数を300人以上処理できないという意味ではない。

ANNニュースサイト動画(7月22日)より

東京都の発表によれば、新規感染者数は7月23日に366人、7月30日に367人、31日に463人と、感染数はいずれも300人を超えた。このことからも「FAXの機能制限により新規感染者数は300人を超えない」ことは事実でないことがわかる。

結論

ウェイボの投稿が情報源として示したニュースには、東京都はFAXで新規感染者の情報を収集し、時間がかかっているという問題を指摘したが、「1台のFAXは1日150人以内の資料処理に限られる」との指摘はなされていなかった。実際、東京都の感染者数は300人を超えた日もあった。したがって、「FAXの機能制限で、東京都内の感染者数は1日300人を超えない」という言説は誤りである。

(冒頭写真:東京都庁でぶら下がり取材に応じる小池百合子知事。7月13日インファクト撮影)

(インファクトはFIJの新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクトに参加しており、この記事にはFIJリサーチャーのユウセンブン氏が協力している。)

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