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[FactCheck] 「台湾の防空システムが中国戦闘機を撃墜」は虚偽 台湾当局の全面否定を中国メディアも追認

[FactCheck] 「台湾の防空システムが中国戦闘機を撃墜」は虚偽 台湾当局の全面否定を中国メディアも追認

中国の戦闘機が「台湾の対空システムで撃墜、パイロットは無事」という情報がツイッターで拡散した。台湾国防部が全面否定し、これを中国政府に近いメディアが追認していることが確認された。(楊井人文)

チェック対象
中国のSU-35、台湾の防空システムで撃墜され墜落、パイロットは無事だという情報がSNSに(何かが炎上している動画が添付された、中国機撃墜を伝える英文ツイートをシェア)
(2020年9月4日、Twitterで投稿)
結論
【虚偽】 この情報を拡散させた海外のニュースサイトには全く情報源が示されていない上、台湾国防部が「偽情報」と全面否定する声明を発表し、これを中国政府に近いメディアが追認している。

中国の戦闘機SU-35が台湾の防空システムに撃墜されたという投稿(冒頭写真)は、「News Line IFE」(以下「NLI」と略称)なる海外のニュースサイトのツイッター投稿をシェアしたもので、一時、3600回以上リツイートされた。

NLIのサイトには9月4日付で「事実:台湾が中国の戦闘機を撃墜」(The Truth: Taiwan shots down a Chinese fighter jet)との記事が掲載され、同サイトのアカウントが、何かが炎上している動画を添付したツイートを投稿し、拡散した(このツイートは現在閲覧できない。なお、NLIのツイッターアカウントの9月4日以前の投稿は全く閲覧できなくなっている)。

NLIの記事は、台湾側のツイッターでそのニュースが流れたとしか書かれておらず、明確な情報源は示されていなかった。ツイッターで添付した動画はこの記事に掲載されていなかった。中国、台湾いずれでも、そのようなニュース報道はなく、台湾(中華民国)政府の国防部が即日、以下の通り「偽情報」と断定する声明文を発表した。

中華民国(台湾)国防部のプレスリリース(2020年9月4日)

(訳文)プレスリリース
インターネット上の「台湾が中国共産党のSU-35型機を撃墜したのか」という噂に対し、空軍司令部は本日(4日)、これは偽情報であり、全く事実ではないと厳重に反論する。
空軍司令部は、国民や国民を混乱させる下心のある人々がインターネット上で意図的に偽情報を作成し、流布していることを強く非難する。
空軍司令部は、空域の安全を維持するため、台湾海周辺の海域や空域の状況を引き続き注意深く監視し、誤・偽情報の拡散を防ぎ、社会不安を引き起こさないよう、即時で正確な情報を提供していくことを強調する。

これを受けて、台湾ファクトチェックセンターも、この情報は「誤り」だとするファクトチェック記事を出した。

念のため、中国側でこの件がどのように伝えられているかを確認したところ、中国政府機関は公式の反応を示していないようだが、多くのメディアが台湾国防部の声明をもとに記事化していた(中国大手検索サイト「百度」の検索結果)。『環球時報』(中国共産党機関紙「人民日報」系列紙)もニュースサイトで、台湾国防部の声明をそのまま伝えていた。仮に「撃墜」が事実で、これを否定する声明が虚偽であれば、中国当局がこれをそのまま伝えることはあり得ないから、中国側が、撃墜の事実はないとの台湾側の声明内容を追認したものと言える。

結論

中台双方の反応から、台湾の防空システムが中国の戦闘機を撃墜した事実はないと言える。元の海外サイトのツイッター投稿にわざわざ出所不明の動画を添付していたことから、裏付けのない情報と認識して投稿された可能性が高く、「虚偽」と判定した。

【訂正】検証対象のツイートは本記事公開時点で削除されていませんでしたので、その点を訂正しました。(2020/9/6 15:35)

(インファクトはFIJの新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクトに参加しており、この記事にはFIJリサーチャーの翻訳協力を得ました。)

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