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【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月5日)

【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月5日)

菅義偉首相が日本学術会議の会員6名の任命を拒否した問題について、日本学術会議からも説明を求める声が高まる中、加藤官房長官は10月5日の会見で「公務員を選定し、罷免することは国民固有の権利である」との憲法15条の規定に言及し、1983年の政府答弁時の解釈と変わらないと説明した。(インファクト編集部)

(注)会見録一覧はこちら。記者会見は公開情報ですので、転載等は自由です。首相官邸サイトの動画などで発言内容を確認し、日本学術会議関連の発言は全て抽出するようにしています。途中で別の内容で質疑応答があった箇所は横ラインを入れています。聞き取りにくい部分などは●●としています。必要に応じて正確を期すための修正を行います。

加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月5日午前)

(記者)
話題変わりまして、共同通信のカサイです。
日本学術会議が3日に総理に対しまして、推薦した新会員候補6人の任命拒否の理由の説明、速やかな任命を求める要望書を幹事会で決定し、内閣府に送付いたしました。
政府の今後の対応についてお聞かせください。

(長官)
10月3日に日本学術会議が総会を開かれて、ごめんなさい、10月2日に総会を開かれた中での要望書が、10月3日に内閣府に届いたということであります。
従前、既に前会長からも要望をいただいておりまして、それと重複しておりますんで、それを含めて、いま事務局で検討させていただいているところであります。
(沈黙)あ、ごめんなさい、総会からの要望書ということです。
失礼、総会が開かれたわけではないということであります。

(記者)
NHKの●●です。学術会議についておうかがいします。
2016年の学術会議の補充人事について、3つのポストのうち2つのポストについて、官邸側から難色が示されたという報道ありますが、事実関係と、事実であればその理由についてお聞かせください。

(長官)
個々の人事のプロセスについては本件のみならず、基本的にお答えは差し控えさせていただいたと思いますが、当時の日本学術会議の会長と官邸の幹部との間で、この学術会議のあり方含めてですね、いろいろと意見交換はあったのではないかというふうには思います。

(記者)
NHKのナガタです。引き続き学術会議についておうかがいします。
政府の説明について森山国対委員長から、人事のことは言えないこともあるかもしれないが、可能なことはしっかり説明することが大事だという発言がありました。
また、昨日、総理と面会した田原総一朗氏は、面会後のぶら下がりで、国民に分かるように説明するべきだと話して、総理も前向きだったというふうに話されています。
今後、任命拒否のより詳細な理由や事情について説明する予定はあるんでしょうか。

(長官)
これまでもこの場などを通じて説明させていただいたところでありまして、日本学術会議がどういう設置目的であるのか、わが国の科学者の内外に対する代表機関として、科学の向上発達を図り、行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることを目的として設置をされているということ、この機関そのものは内閣総理大臣の所轄の下の国の行政機関であるということ、そして、そのための予算も10億円、毎年支出されているということ、加えて、当然それぞれのメンバーは特別公務員という立場であるということ、そうしたことを踏まえて、内閣総理大臣が任命権者としての責任において会員を任命してきたということであります。
また、この会員の選定のあり方については、これまで累次、改正がなされてきたわけでありますけれども、その際に総合学術会議、これ、別の機関でありますから、日本学術会議には総合的俯瞰的な観点からの活動が期待されるということも踏まえて、これまで議論されてきたと。
そうした一連の流れを踏まえて、今回、私どもとしても総合的俯瞰的観点に立って判断をさせていただいたということでありまして、引き続きそうした説明をですね、しっかり行っていきたいというふうに思います。

(記者)
引き続き学術会議についておうかがいします。NHKのナガタです。
今回の一連の動きの中で、学術会議自体に対する関心も世間で急速に高まっていますが、推薦候補を任命しなかった背景に、総理が学術会議の選出の形式ですとか、もしくは、その学術会議そのものの在り方に疑問を持っていたとするならば、今後、そうした学術会議の根本的な在り方や選出方式について、何らか政府として検討を進めていくお考えはあるんでしょうか。

(長官)
いまも申し上げましたけど、任命についてはですね、専門領域での業績のみにとらわれない広い視野に立って、総合的俯瞰的活動から、観点からの活動を進めていくという観点に立った議論、改正が前回も行われてきたわけでありまして、当初は選挙で決めていたものが、登録団体からの推薦に替わり、さらに、ここに来て、またやり方が平成16年度から、平成16年から改正されてきた。
累次、改正がなされてきているわけでありまして、そうした流れに立って、そして、昨今では総合的俯瞰的な活動からということが大事だという指摘も受けているということであります。
あの、そうした経緯もしっかり踏まえて、私どもとしては必要なコミュニケーションを図っていきたいと思います。

(記者)
朝日新聞のキクチです。関連でおうかがいします。
今のNHKさんの質問に関連するんですけれども、特別公務員なので首相に任命権があるというのも今回の1つの理由かと思います。
こうした法律の解釈に議論があったとしても、時代や社会情勢で状況が変化していけば、変化していくと政府は考えるのであれば、この任命の仕方等についてもですね、変化した旨をしっかり説明すればいいのではないかと思うんですけれども、こうした説明が足りていないのではないでしょうか。

(長官)
あの、もともとですね、任命、そもそもわが国の法律でありますから、憲法にのっとっております。
ここでお話があった学問の自由っていうのもそうであります。
一方で、公務員の選定罷免権、これは国民にあるということも明確に書かれております。
それから、行政権は内閣に属するということであります。
そうした、この法律体系、憲法体制、法律体系は変わっていない。
その構造の中でですね、その日本学術会議に限らず、さまざまなものというのはその時々の状況があり、また、期待されているものがあると。
その中で、いま申し上げた構造の中で、それに応え得るものにしていくということと、これは当然、努力をしていかなきゃいけないということでありまして、今回もそういう大きな構造自体は変わっているわけではないということであります。

(記者)
関連でおうかがいします。朝日新聞のキクチです。
1983年のその法律解釈時には、国会で形だけの推薦制で、推薦していただいた者は拒否しない、などとする答弁をしています。
一方、2018年に内閣府が内閣法制局に照会した際には、法制局側が、今回、解釈を明確化させたとしています。
明確化ということは、83年当時の解釈は、この照会があった2018年まで維持されていたという理解でよろしいでしょうか。

(長官)
あの、その解釈含めて、もともと先ほども説明したように、法律は当然、憲法の下でつくられてきている、当然、憲法の各条文、あるいはその理念というものが反映されてきているわけでありますから、そしてつくられてきた、そして今日に至ってきている。
そこは、何ら変わるものではないということであります。

(記者)
続けておうかがいします、朝日新聞のキクチです。
今回、解釈の変更に当たっているのか、当たっていないのか、内閣法制局は明確化させたと述べているだけで、解釈を変更したとは言ってないわけですけれども、これはどちらの認識が正しいのか。
仮に、あの、解釈の変更に当たらないとすれば、それはなぜなのか、理由についてご説明いただけますでしょうか。

(長官)
ですから、先ほど申し上げた当時の解釈も、憲法の下において法律がなされ、それを踏まえたことが当然前提になっているわけでありますから、そこをもう1回、そこの構造を整理したというものが、いまお話があった法制局とのやりとりということでありますんで、別にそこの、最初に申し上げた構造そのものを変化、変更させているわけではないということであります。

(記者)
東京新聞のムラカミです。
いま2018年の件でもう一度整理したというご説明がありました。
その整理した内容について、先週の金曜日の会見でもおうかがいした際に、詳細は事務局のほうに聞いてもらいたいというふうにご説明いただきました。
その後、ちょっと事務局に確認したところ、まだ確認中で、これ以上答えられないというお答えだったんですけれども、改めて、その整理した内容というのは、どういった内容であったのか、その内容を改めてこちらでご説明いただけませんでしょうか。

(長官)
先日の会見でですね、そうしたものであるということは申し上げました。
具体的な中身について、これはいま、内閣府の日本学術会議事務局において、関係法令に基づいてですね、いまお話があったことに対してどう対応すべきなのかについて検討がなされているということでありますから、その検討を早急にさせた上で対応させていただきたいというふうに思います。

(記者)
東京新聞のムラカミです。
すみません、いま検討を早急にとありましたけれども、つまりその1983年当時では、国会で、例えば、中曽根総理も政府が行うのは形式的任命にすぎませんというふうに答弁されているわけですけれども、そのときの答弁が、その後、推薦の仕方が変わっただったりとかいうことがあれ、解釈が変わっているのかどうかということをおうかがいしたいんですけれども。
それがこの2018年において、つまり、中曽根総理の国会答弁というのは現在も生きているのか、それとももう変更されたのか、その点についておうかがいできますでしょうか。

(長官)
いや、ですから、そこを改めて整理を、憲法との関係含めて、整理をした、ということでありまして、その構造的な仕組みそのものを変更しているわけではないというのは、先ほど説明をさせていただいたということであります。
じゃあ、具体的に、そこの議論がどうだったのか、というご質問ですから、その中身をどういう形でお示しするのかについて、いまいろんな関係法令との、も含めてですね、内閣府の日本学術会議事務局において検討させていただいておりますが、あの早々に答えを出させていただきたいというふうに思います。

(記者)
産経新聞チダと申します。関連して、学術会議についておうかがいいたします。
先ほど長官のですね、説明の中にもあったように、学術会議には、毎年約10億円の予算が計上されています。
学術会議は科学に関する重要事項を審議し、その実現を図ること、科学に関する研究の連絡を図り、その能力を向上させることを職務としております。
毎年の予算なんですけれども、具体的にどういった分野に使われているのか、また、政府が把握されている予算のですね、内訳について教えてください。

(長官)
はい、日本学術会議の予算は約10.5億円ということであります。
内訳は、人件費などを含めて、政府、社会等に関する提言等ということで2.5億円、各国アカデミーとの交流等の国際的な活動で2.0億円、科学の役割についての普及啓発で0.1億円、科学者間ネットワークの構築で0.1億円、事務局人件費・事務費などで5.5億円ということになっております。
こうした中で、委員の旅費もそれぞれの項目に入っているということであります。


(記者)
朝日新聞キクチです。
先ほどの学術会議の質問に戻りますが、先ほど自民・立憲両党の国対委員長が会談して、学術会議の問題について野党側が閉会中審査に官房長官、井上大臣の出席を要請しています。
森山国対委員長はしかるべき責任ある方が答弁するよう配慮が必要だと述べられておりますが、官房長官ご自身の口から、国会で今回の問題についてご説明したいというお考えはありますでしょうか。

(長官)
あの、いずれにしても国会の中での対応ですから、それは両国対委員長、あるいは国会の場でお決めになるということなんだろうと思います。
お決めになられたことに対しては、しっかり対応、政府として対応していきたいと思います。


2020年10月5日午前、首相官邸

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