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【コロナの時代】学術会議問題:公文書に残る政府弁明の変遷①

【コロナの時代】学術会議問題:公文書に残る政府弁明の変遷①

菅総理が推薦された6名の任命を事実上拒否した日本学術会議(以下、引用以外は学術会議とする)は、今も定員を満たさない状態が続いている。菅総理はその拒否の理由を明らかにせず、組織に問題が有るとして追及をかわそうとしているが、そもそも、総理大臣は学術会議が推薦した研究者の任命を拒否できるのかについては議論を避けている。これについて共産党の田村智子議員が内閣府から政府側の説明に修正が加えられた過程を示す資料を入手。田村議員の了解を得て、その内容を公表する。(立岩陽一郎)

日本学術会議第17条による推薦に基づく会員の任命を内閣総理大臣が行わないことの可否について」と書かれた文書がある。共産党の田村智子議員が内閣府に請求して得たもので、作成は内閣府日本学術会議事務局となっている。

田村議員が入手した最初の文書は平成30年10月19日のものだ。2018年。それは既にいくつかの修正が加えられている。この19日の部分の9の後ろに8があり、その数字が横線(-)で消されている。つまり、10月18日の文書を修正したという意味だ。

文書の修正は、加えられた文書には下線が引かれ、削除の文書には前述と同じ横線が引かれる形で行われている。こうした作業が行われること自体は稀なことではない。作成された文書は上司がチェックして修正を行う。その作業と見れば不思議ではない。しかし菅総理がその後に行った任命拒否と、この2018年が菅総理が官房長官として絶大な権限を持っていたその時であることを考えると、通常の修正作業とばかりは考えられない。予断を持たずに、その修正の内容を見ていきたい。

ただし、修正のその箇所はかなりの部分に及ぶため、全てを記述するのは不可能だ。それで、問題の「内閣総理大臣の任命権の行使」についてのみ限って見ていきたい。

修正前の文書には以下が書かれている。

日本学術会議は内閣総理大臣の所轄にある行政機関であるところ、憲法第65条は、内閣が行政全般に統括権を持つことを意味しており、日本学術会議には時々の政治的便宜に左右されることがないよう職務の独立性が保証されているとはいえ、内閣総理大臣が、日本学術会議に対して一切の人事権を持たないと解することは、憲法65条の趣旨に反していると考えられる。

憲法第15条第1項の規定に明らかにされているところの公務員の終局的任命権が国民にあるという国民主権の原理についても考慮する必要があり、内閣総理大臣が会員の任命に当たって、いかなる場合でも発言権を持ちえないということは、国民・国会に対して責任を負いえないことになり正当ではないとかが得られることを踏まえれば、内閣総理大臣は、日本学術会議から推薦された会員候補者の任命を行わないことができると解されると考える。

この文書の修正では、冒頭の「①憲法第65条は、内閣が行政全般に統括権を持つことを意味しており」といった文言が削除された他、細かい字句の入れ替えが行われている。それでも大きく文意が異なるものではない。

次に、その後に続く文書を見てみたい。先ず、修正前の文書だ。

もっとも、どのような場合でも内閣総理大臣が日本学術会議から推薦された会員候補者の任命を行わないことができるかということについては、日本学術会議が、科学者自身により、科学者の代表組織として設置されたこと(中略)会員選出方法については、選挙制の弊害が指摘された結果として推薦制が採用されたが、推薦制の採用に当たっては科学者の自主性に配慮されていたことを鑑みれば、日学法第17条による推薦に基づき行う内閣総理大臣の任命行為は、会員候補者に特別職の国家公務員たる会員としての法的地位を与えるための形式的なものと解されるところであり・・・」。

この「あり・・・」の後は全面黒塗りになっておりこの資料から後の記述は全て読み解くことはできない。しかし、「内閣総理大臣の任命行為は形式的なものと解される」となっていたことがわかる。

では、これがどう修正されたのか。実は修正後もこの段階では大きく変わっていない。

もっとも」から削除され、「しかしながら推薦・任命制いついては」との短い言葉にかわっている。そして以下の様な新たな文言が加わる。

①会員候補者が優れた研究又は業績がある科学者かどうかを判断しうるのは、科学者の代表機関である日本学術会議であること②日本学術会議は、科学者自身により設置された科学者の代表機関であることから、科学者が自主的に会員を選出することを基本としており、昭和58年の日学法改正により行われることになった内閣総理大臣による会員候補者の任命は、会員候補者に特別職の国家公務員たる会員としての地位を与えることを意図していたことからすれば、内閣総理大臣は、日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があるのであって、実質的な任命権は日本学術会議にあり、内閣総理大臣の任命権は形式的なものとなることが期待されているといえる

当初の「形式的なものと解される」が、「形式的なものとなることが期待されている」に修正されたわけだ。「形式的」のニュアンスが弱まっているが、それでもこの修正では大きく趣旨が変わっておらず、内閣総理大臣に任命権が有るとはしつつも、学術会議の選出判断を無視して任命を拒否して良いとの内容には必ずしもなっていない。

つまり、この修正段階では、菅総理の判断を正当化する内容ではないと言える。しかし、この後も内容の修正が続けられることになる。

(続く)

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