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【コロナの時代】その時、中国当局は何を発表していたのか⑤ 〜2日間で新規感染者が100人を超えた

【コロナの時代】その時、中国当局は何を発表していたのか⑤ 〜2日間で新規感染者が100人を超えた

武漢市の衛生健康委員会は、1月20日の発表で、18日と19日の感染状況をまとめて明らかにした。これまで、1日の新規感染者数としては1月17日の17人が最多だったが、両日ともそのペースを大幅に上回る急増ぶりが明らかにされた。両日の新規感染者は合わせて136人で、3人目の死者も出た。アウトブレイクが起きたことは今や明らかだった。 (宮崎紀秀/池雅蓉)

「18日0時から24時までに、治癒・退院5人、新規感染59人、1人死亡。19日0時から24時までに治癒・退院1人、新規感染77人。

武漢市では、各レベルの医療機関における事前スクリーニング、トリアージ及び発熱外来の運用をルール化した上で、新たに改定された新型コロナウイルス感染による肺炎の診断・治療計画に基づき、新型コロナウイルス感染による肺炎の疑いの有る患者のスクリーニングをさらに強化した。

同時に、検査プランの更なる改善、検査プロセスの最適化、検査スピードの高速化を図った。国、省、市の専門家グループは、臨床症状、疫学史と病因学的な検査結果を合わせて総合的に判断し、1月18日の新たに新型コロナウイルス感染による肺炎が確認されたのは59人、1月19日に新たに新型コロナウイルス感染による肺炎が確認されたのは77人。両日合わせて新たに136人が確認された」

その136人については、以下のような概要のみ明らかにした。

「136人の患者のうち男性66人、女性70人。最年少は25歳、最高齢は89歳。発症日は全て2020年1月18日以前。最初の症状は主に、発熱、咳や胸苦しさ、呼吸困難。新たに改訂された治療計画に従い患者の状態を軽、重、重篤に分類すると、軽症100人、重症33人、重篤3人(うち1人死亡)」

両日の新規感染者を加えた、1月19日22時までの感染状況の累計についてもまとめている。

「1月19日の22時までに、我が市の新型コロナウイルス感染に肺炎患者の報告の累計は198人。うち25人が治癒・退院。3人が死亡。 170人(うち軽症126人、重症35人、重篤9人)がいずれも武漢の指定医療機関で隔離治療中。 追跡された817人の濃厚接触者のうち、すでに727人は医学的観察を解除、90人がまだ医学的観察中。濃厚接触者の中で、関連する病状は見つかっていない」

武漢市の衛生健康委員会が以上の発表をした1月20日は、中国当局の新型コロナウイルスへの対応を見る上で転機となる日でもある。習近平国家主席が、「予防と制御に全力を尽くさなくてはいけない。感染症の蔓延を断固食い止めなければならない」と重要指示を出し、李克強首相は国務院の常務会議を主催し、対策を具体化するとともに、「伝染病予防治療法」に基づき新型コロナウイルスを乙類の感染症に指定し、対応措置を講じた。同日午後には、国家衛生健康委員会が記者会見を開き、専門家チームが、新型コロナウイルスがヒト・ヒト感染する事実を明らかにした(その内容については、別の回で見る)。

武漢市の衛生健康委員会は、先に触れた市内の感染状況とは別に、HP上に同日19時13分、市内の発熱外来をもつ医療機関と指定医療機関のリストを示した。①市内の発熱外来は61箇所 ②市内の指定医療機関は9箇所 ③省と市の救急医療の専門家は25人 と共に、所在地区ごとに医療機関の具体的な名称が分かる一覧表を添付した。中央政府の動きに伴い、武漢市も本格的に新型コロナウイルスへの対応に乗り出した様子が分かる。

これまで主に武漢市の衛生当局の発表を追ってきたが、この頃から国の衛生当局である国家衛生健康委員会も、武漢市とは別に、高い頻度で発表するようになる。同委員会は1月19日、「国家衛生健康委員会は新型コロナウイルス感染による肺炎の予防制御を積極的に推進」と題し、以下の内容などを公表した。

「湖北省武漢市で原因不明の肺炎が発生した後、我が委員会は直ちに国家作業部会と専門家チームを武漢に派遣し、現地管理の原則に基づいて湖北省および武漢市と協力して、予防制御措置の実施に努めた」

加えて国家的な取り組みが始まったことを明らかにする。

「我が委員会は直ちに中国疾病予防コントロールセンター、中国医学科学院、中国科学院、軍事科学院軍事医学研究所などのユニットを組織して、症例サンプルのラボでの並行検査を実施した。2020年1月8日、新型コロナウイルスが感染症の病原体であると暫定的に確認した

不安を煽らないためか、次のようにも発表している。

専門家の研究と判断により、目下の感染症は予防・制御が可能である。しかし、新型コロナウイルスの感染源はまだ発見されておらず、感染経路もまだ十分に把握されておらず、ウイルスの突然変異についても厳しく監視する必要がある」

さらに、同日、国家衛生健康委員会は、「新型コロナウイルス感染による肺炎を法定感染症と指定し管理する」という決定を発表した。

「伝染病予防治療法の関連規定に従い、目下の新型コロナウイルス感染による肺炎の病原、疫学、臨床の特徴などの認識に基づき、国務院の批准同意を得て、国家衛生健康委員会は、新型コロナウイルスを乙類の感染症と指定し、甲類の感染症に対する予防制御措置を採ると決定した。新型コロナウイルス感染による肺炎を法定伝染病の管理に入れ、各レベルの人民政府、衛生健康行政部門、その他の政府部門、医療衛生機関は法に基づき、感染者の隔離治療、濃厚接触者の隔離医学観察などを行い、共同して新型コロナウイルス感染による肺炎の流行を予防制御する」

因みに、SARSや鳥インフルエンザも乙類の感染症には分類されている。採られた措置とは、ペストやコレラといった甲類に分類される感染症の発生に対処する際に適用されるものだ。では、どういう時に、甲類の措置がとられるのか?それは、 性質が良く分からない場合だ。

乙類に分類しつつ、甲類として対応する。ここに国家衛生健康委員会の動揺を見て取ることができるかもしれない。

(続く)

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