インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

【政治やろうぜ!〜世界の動かし方完全マニュアル】①政治の責任者は誰?

【政治やろうぜ!〜世界の動かし方完全マニュアル】①政治の責任者は誰?

凄いタイトルの連載が始まりました。様々な選挙を取材し続けている宮原ジェフリーが若者に問いかけます。そして一緒に考えます。是非、この記事に、否、この記事が問いかける議論に参加してください。(文・写真/宮原ジェフリー)

突然ですが、あなたは政治に参加していますか?

もちろん、InFactの読者のみなさんでしたら選挙の度に欠かさずに投票に行っている方も多いでしょうし、政治に関するニュースをしっかりチェックしていることと思います。

それでも、「私は政治に参加している」と自信を持って言えるのは現職の政治家の方や、政治団体に所属して活動している人に限られるのではないでしょうか。

他方、メディアでは低投票率が問題視され、政治参加に消極的な市民の態度について「おまかせ民主主義」と呼んで揶揄するむきもあります。

しかし、実際のところ「政治に参加する」とはどんなことなのでしょうか?そもそも、一般の市民が政治に参加することなんて可能なのでしょうか?

<写真A:2011年の反原発デモ(筆者撮影)>

この社会を動かすのは誰か

そもそも日本社会において、政治に責任を持っているのは誰なのでしょうか。国政なら総理大臣が、地方行政なら都道府県知事や市町村長、というのが一つの答えになるかもしれません。しかし、ご存知の通り、総理大臣を選ぶ国会議員も、地方の議員や首長も、私たちが選挙で選出しています。基本的に、日本の社会で起きている政治的な現象については、日本国憲法で定められた主権者である私たち国民が責任者ということになります。それを「国民主権」と私たちは言いますよね。

もちろん、国民全員が話し合いの場に立って議論に参加することはできないので、基本的には選挙で決めた代表者たち(政治家)に意思決定を任せているわけです。これは、「代議制民主主義」ですね。

日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。” (日本国憲法前文)

つまり、選挙にさえいけば政治に参加している気分になってしまうし、選挙を棄権してしまうと政治に責任を持っていないように思えてしまいます。ですが、この市民の政治参加=選挙(投票)としてしまう考え方にはいくつか問題があります。

一つは、選挙権を持たない人が政治に参加する権利が無視されてしまう点。18歳未満の人や、日本国籍を持たない人、その他さまざまな理由で選挙で代表を選ぶ権利を持っていない人であっても、この国に暮らす人であれば政治に参加して世の中をよりよく変えてゆく力になることができます。例えば、日本の入国管理局に収容されている外国人の人々への人権侵害が指摘されていますが、その当事者やその家族の多くは選挙権を持ちません。ですので、そういった人たちは問題となっている状況を改善するためには自分たちが投票で変える以外の方法を持たなくてはいけません。

もう一つの問題は、選挙(投票)以外の政治への関わり方への想像力が及ばなくなることです。例えば特定の主張をアピールするために公道を塞いでデモをしたり、街頭で署名を集める、裁判闘争に訴える、といった運動について非常に偏った政治的な思想を持った人たちが行っている、自分とは関係のない活動だと考えている人は少なくないのではないでしょうか。

また、政治家や官公庁に直接的にかけ合って政策提言をしたり、ロビイングをする、といったことについても専門性や、個人的な繋がりがものを言う一部の限られた人しかできない活動だと思われがちです。しかし、これらの活動は私たち主権者が直接的に政治を動かす手段としてとても重要なものなのです。

<写真B:街頭演説の様子、大きな組織がなくても私財を投じて訴えを起こす候補者も少なくない(筆者撮影)>

政治参加のハードルを下げて社会をアップデートしよう

国民が主権者なんだ、ということは社会の授業で習って知っていたとしても、自分自身が積極的に政治に関わるということはせず、選ばれた政治家に判断を委ねて、議会や首長の監視を怠ってしまい、有権者を軽視した政治が行われる状況こそが「おまかせ民主主義」といえるのかもしれません。

とはいったものの、では、どのように積極的に政治に関わることができるのか、についての知見については学校で教わることはありませんし、まとまったノウハウが共有されているとは言い難い状況です。この連載では、まずは政治の仕組みや、政治課題の探し方、情報収集の方法などについて説明する【政治を知ろう編】(全4回を予定)と、デモや署名活動、ストライキや政策提言といった具体的な行動の方法について考察する【政治を動かそう編】(全16回程度を予定)に分けて、現在の政治をどのように理解し、動かせるかについて、実際に社会にインパクトを与えた例を紹介しながら、お読みいただいたみなさんが実際に行動してみることができる方法について一緒に考えてゆきたいと思っています。

自分の手でこの社会を変えることができる、という実感を1人でも多くの人が持つことができれば、この国の民主主義は確実にアップデートできるものと信じて。

(つづく)

Return Top