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【コロナの時代】友人が感染した(前編)

【コロナの時代】友人が感染した(前編)

3度目の緊急事態宣言が大阪、東京などで発せられるなど、コロナの時代は終息を見通すどころか、まだまだ続く状態だ。これまでに57万人余が感染したというが、その感染者は徐々に私の周囲でも見られるようになっている。実際に、感染するとどうなるのか?そう思っている時、友人から「感染していた」との話があった。(立岩陽一郎)

都内に住む会社勤めの友人から、「実は昨日まで感染して隔離療養していた」と聞かされた。驚くことは無かった。既に自分の周囲の人に感染者が出ていることが実感として感じられていたからだ。

しかし、実際に「あなたは感染しています」あるいは、「あなたは陽性です」と言われると、人はどうなるのだろうか? それを知りたくて話を聞きたいとメールを入れると、暫くして「かまいませんよ」との返信が来た。

既に回復している友人とオンラインで向き合った。私はチリ産の白ワイをグラスに注ぎ、友人は「まだわずかに喉がヒリヒリするのが気になるので」とノンアルコールビールを開けた。

「取り敢えず、ご帰還おめでとうございます」と画面の向こうの友人に伝え、乾杯した。4月半ばから下旬にかけてホテルで隔離療養していたという彼の動きは以下の通りだ。

1日目 朝起きると37.5度の発熱あり。コロナ感染を疑い、昼過ぎにPCR検査を受ける

2日目 朝、陽性だったとの連絡あり。保健所より、2日後(発症4日目)の午後からホテルで隔離療養生活に入るよう指示される

2日目〜4日目の午後 自宅で療養。概ね日中はそれほど熱が上がらず、夕方から夜にかけて38〜39度くらいの高熱が出るパターンの繰り返し

4日目 夕方前、自宅までに都のスタッフが運転する迎えの車が来て、ホテルに移動。約40分後にホテルに入る

4日目〜8日目 毎日、熱が上がったり下がったりが続く。高熱時は頭痛と喉痛がつらく、同時に、自分が軽快するのかどうか不安を覚える

9日目 この日の朝から熱が下がり、以後、37.5度に達することなし

12日目 体温37.5度以下(平熱)で72時間が経過したため、軽快したと医師の診断を受け、ホテルから退所。普段の日常生活に戻ってよいと言われ、公共の交通機関で帰宅。

・・・などと経緯を説明する友人に対し、面と向かって問いかけた最初の言葉は、陳腐なものになった。

「で、どうだったんですか?」

我ながらとぼけた質問だと思ったが、友人は真面目に答えてくれた。

「(発症日の)朝起きたら熱っぽくて、それで、新型コロナに感染している可能性もあるかもしれないからPCR検査を受けようか、と思ったんです」。

前日まで別に何の予兆も無かったのに、4月中旬のある朝、異変が起きたということだ。37.5度の熱と頭痛。喉に痛みも感じた。

「しかし、それって、風邪の症状ですよね?単なる風邪とは思わなかったんですか?」

それが・・・と話し始めたのは前の日のことだった。

「実は前日、会社の定期健康診断を受けていたんです。採血され、身長・体重や血圧を測り、心電図も取って医師にも診てもらうなど一通り。そのときは何も異常が無かったんです」。

それが1日後に急に発熱したので、「もしかして」と思ったのだという。直ぐに掛かりつけの近所のクリニックに電話をして症状を伝え、「PCR検査を受けたいのですが」と相談した。そのクリニックからは、患者に提携先の総合病院でPCR検査を受けてもらうことにしていると説明され、迅速に検査予約の手配をしてくれたという。

「保健所への連絡までしてくれたので助かりました」。

友人は会社に熱が有ると連絡して休みにしてもらい、病院からの連絡を待って昼過ぎに病院へ行った。

「病院の建物に入るのではなく、脇の駐車スペースに検査場として特設テントが設けられていて、その中に入りました。清潔な空間でしたし、私の前後に1人ずつ検査を待っているくらいで、密ということはまったくなかったです」

例の、鼻に綿棒を入れる検査?

「ええ。鼻と唾液の検査と両方あると聞いていましたが、私が受けたのは、より精度が高いという鼻の検査の方でした。鼻の奥に綿棒を入れられて、一瞬痛かったですが」。

そしてクリニックから連絡が入ったのは翌日。

「『陽性です』と言われました」。

どうでした? やはり、ショックなものですか?

「いや、そういうのは無かったです。すでに関連情報を検索して、大抵の人は感染しても軽症だということがわかっていましたから」。

ただし、本人が陽性者になると、家族は当然、濃厚接触者になる。友人はただちに結果を夫人に伝え、検査を受けてもらった。陰性だった。

しかし、自分が家にいるわけにはいかない。陽性者のうち、重症者は入院し、軽症者や無症状の者はホテルでの隔離療養となる。保健所から連絡があり、軽症とされた友人は改めて後者を指示された。

「療養先のホテルについても連絡があり、都の迎えの車が自宅まで来ました。ドライバーが途中から電話をくれて自宅近辺のルートを聞くなど、丁寧な対応でした。車はワゴンタクシーのような立派なもので、途中、別のホテル入所者と相乗りになるかもしれないと言われていましたが、車中では結局、私一人でした」。

車の中では何を考えていたのか問うてみた。

「『ホテルは最短で発症日から10日後に出られる。ただし、軽快して72時間連続で平熱が続いていることが条件』と言われており、私の場合、ホテル入所から最短で1週間後に出られることになるということでした。『来週の今日、シャバに戻っているのかな…』などと思いながら、窓の外をぼんやり見ていました」。

すでに会社の上司には、保健所の指示でホテルで隔離療養に入ることを伝えていた。しかし、その時は「コロナウイルスを甘く見ていた」(本人)という。

「軽症だということで、ホテルの部屋でリモートで仕事をするつもりだったんです。上司や同僚にも『体調を見つつある程度は仕事ができると思います』と伝えていて、実際にパソコンや業務資料を、着替えなどと一緒にスーツケースに入れてホテルに持ち込みました」。

しかし、そこに誤算があった。無症状感染者ではない友人の体内では、やはりウイルスが暴れようとしており、症状が出ると仕事どころではなくなったのだ。

「熱が出て身体の節々が痛くなるのと、頭痛、そして喉・・・咳や鼻水は無かったんですが、喉が痛くて参りました。ひどいときは水も飲めないし、一度、野菜ジュースを飲んだらビリビリと激痛が走った。頭痛は、頭蓋骨の中のあちこちにくぎを刺されるようにズキズキして・・・」。

平然と口にしていたが、これはどう見ても立派な感染者だ。昔空手で鍛えた友人だから耐えられたのかもしれない。「頭蓋骨の中のあちこちにくぎ」なんて、聞いただけで私などは倒れそうだ。

数日間、実際には仕事ができるような体調では無かったということだ。上司と同僚には、むしろ悪化したように思える入所当初の体調について、見通しの甘さを詫びる文面と共にメールで説明するのが精一杯だった。

しかし、そこまでの症状が出ながら、自分への感染経路に心当たりは有るのだろうか? 失礼かと思いつつ尋ねてみた。

「それが、無いんですよ。その10日ほど前に知人と2人で会食したことは有るんですが、時間は1時間半くらいで、互いに十分に距離を置いていたし、別に飛沫を飛ばすようなやり取りでは無かったし・・・」。

それは友人を知る私にはわかる。彼は私と同年代。二人で麻布界隈で飲んだ仲だが、彼の飲みは大人のそれだ。声を張り上げることはない。また、飲み始めると食事をとらない。静かに酒を口に含む。そして語る。飛沫を飛ばすような飲み方とは無縁だ。

それでも感染したというのは、今の感染状況を物語っている様に思えた。

療養先として指定されたのは都心のビジネスホテルだった。東京都のスタッフと看護師たちが常駐して対応していた。

「ホテルでは基本的に自室から出られません。出られるのは朝昼晩の食事前に、1階のロビーに弁当を取りに行くときだけ。あと、食後に弁当がらとゴミをロビーに捨てに行くときですね。

毎日複数回、体温と血中酸素飽和度と脈拍を測り、その結果を、LAVITAというアプリを使ってスマホ経由で登録するんです。体温計は自分のものを持ってくるようにと指示されていたのでそれを使い、血中酸素飽和度と脈拍は、入所時に貸与されるパルスオキシメーターで測ります」。

無症状の人は1日に2回、朝の6時50分と15時30分に測定・登録を行うのが原則だが、彼の様に症状の出ている人は、それに正午と20時の分も加えた合計4回、アプリでデータを送る。体温、血中酸素飽和度、脈拍に加えて、「気分が悪い」「喉が痛い」「味覚がない」などの項目に「はい/いいえ」の2択で答えた。

これらは形式的なものではなかった。スマホでデータを登録するとまもなく、看護師から内線電話が入り、状況についてやり取りが行われるという。

「たぶん相当厳しい条件で働いているにもかかわらず、献身的な対応をしてくださった看護師の方々には感謝しかない」。

彼はその言葉を何度も口にした。看護師たちは、24時間いつでも入所者の異変に対応できるようスタンバイしており、電話では「熱がまた上がったようですけど、おつらくないですか」「熱はあるけどパルスオキシメーターの酸素の数字が良いですから、きっとまもなく良くなりますよ」「ふだんから脈拍は速い方ですか」などと細やかにケアしてくれたという。

しかし友人の状況は厳しかった。熱が下がってもなかなか落ち着くことなく、再び上昇してしまう。

ホテルで医療行為を受けることはできないが、そのかわり市販薬はもらえる。熱と頭痛と喉痛が収まらないと電話で看護師に訴えると、「ラックル」という薬を渡された。

「食事時に弁当と一緒にピックアップしたのですが、このラックルという薬、検索してみたら腰痛の薬だと謳っている。果たして効くのかなと思って説明書を見ると、解熱や頭痛にも効果ありと書かれており、飲んでみたら、案外と私にはこれが効いてくれました」。

友人は朝起きるとだいたい37度台後半から38度くらいの熱があり、頭はズキズキ、喉もヒリヒリ痛む。そこでラックルを飲むと、熱は平熱レベルまで下がり、頭と喉の痛みは和らぐ。しかし、午後遅めになると薬の効き目が弱まり、熱も上がる。そこで夕食時に再び「ラックル」を飲み、症状を緩和して寝る。しかし、夜半から明け方になるとまた熱が上がり頭痛、喉痛が始まる……。

「〈発熱、頭痛、喉痛〉→〈薬を飲んで症状緩和〉→〈薬が切れてまた発熱、頭痛、喉痛〉・・・この無限ループがいつまで続くのか、なんて考えてうんざりしてきました」。

(後編につづく)

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