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[Factcheck]「フランス政府 9月からは保護者の同意なしに子どもたちにワクチンを接種する予定 親が同意しない場合は、3万ユーロの罰金と2年間の懲役」は誤り

[Factcheck]「フランス政府 9月からは保護者の同意なしに子どもたちにワクチンを接種する予定 親が同意しない場合は、3万ユーロの罰金と2年間の懲役」は誤り

国内の多くの施設に入場するにあたり「ワクチン接種証明」「陰性証明」「治癒証明」のいずれかを意味するQRコード付きの証明書「衛生パス」の提示を必須にし、大きな波紋を呼んだフランス政府。そのフランス政府が、保護者の同意なしに子どもたちにワクチンを接種すると言う情報が拡散した。しかも、親が同意しない場合は3万ユーロの罰金と2年間の懲役を科すという。しかしこれは「誤り」だ。(佐藤翠)

チェック対象
(フランス政府は)9月からは保護者の同意なしに子どもたちにワクチンを接種する予定だと言います。 そして、親が同意しない場合は、3万ユーロの罰金と2年間の懲役が科せられます。Twitter、2021年8月26日投稿)
結論
【誤り】フランス政府は未成年の新型コロナワクチン接種を義務とはしていない。

このツイート(冒頭画像)は、8月29日現在3430いいね、2029リツイートを獲得している。

未成年のワクチン接種は義務ではないと繰り返し明記
フランスの国民教育・高等教育・研究省のウェブサイトには、未成年のワクチン接種について「12歳から18歳へのワクチン接種は強く奨励されている。しかし、接種するか否かは個人の自由であり、12歳から15歳が接種するにあたっては、親の同意が必要である」とまとめられている。

該当箇所を翻訳すると以下の通りになる(筆者訳)

La vaccination des adolescents contre la Covid-19 est aujourd’hui fortement recommandée par les autorités sanitaires dès l’âge de 12 ans révolus car elle participe à la réduction de la circulation du virus. Elle n’est pas obligatoire. Elle est gratuite, c’est-à-dire qu’elle est intégralement prise en charge par l’Assurance Maladie, sans avance de frais.

筆者訳:思春期の子どもたちへの新型コロナウイルスワクチン接種にはウイルスの感染拡大を抑える効果があることから、現在保健当局は12歳以上の子供へのワクチン接種を強く推奨していますが、義務ではありません。ワクチン接種は無料であり、フランスの健康保険で全額カバーされています。

Comment les adolescents de 12 à 18 ans peuvent se faire vacciner ?

Les adolescents peuvent se faire vacciner comme les adultes dans le centre de vaccination de leur choix mais aussi par un médecin, un pharmacien ou un infirmier.

Une offre de vaccination est également proposée dans les établissements scolaires pour faciliter la vaccination des collégiens et lycéens. Différentes modalités peuvent être mises en place : créneaux dédiés dans des centres de vaccination situés à proximité immédiate des établissements ou vaccination dans des centres éphémères à proximité des établissements, ou vaccination au sein des établissements par des équipes dédiées intervenant habituellement dans les centres de vaccination. Si l’intervention d’une équipe de vaccination sur site est impossible ou le centre de vaccination trop éloigné, l’établissement pourra organiser le déplacement des élèves vers un centre de vaccination.

Les adolescents de 12 à 15 ans auront besoin de l’accord de l’un des deux parents pour se faire vacciner contre la covid-19 (une autorisation parentale devra être remplie et signée par l’un des deux parents). Pour les adolescents de 16 ans et plus, l’autorisation parentale n’est pas nécessaire.

(筆者訳: 12歳から18歳までの思春期の子どもたちは、どのようにワクチンを接種することができるのでしょうか?

10代の子供たちも、希望するワクチン接種センターで大人と同じように接種できます。また、医師、薬剤師、看護師から接種してもらうことも可能です。中学生・高校生への接種を促進するため、学校でもワクチン接種を行っています。学校のすぐ近くにあるワクチン接種センターに(中学生・高校生)専用の時間枠を設け接種したり、通常はワクチン接種センターで働いている専門チームが学校内で予防接種を行ったりするなど、さまざまな方法が考えられます。もし、学校でワクチン接種を行うことが不可能な場合や、ワクチン接種センターが遠すぎる場合、学校は生徒をワクチン接種センターに連れていくことができます。学校は、生徒がワクチン接種を受けている場合に専門家が立ち会うよう手配することもできます。

12歳から15歳の子どもたちがワクチンを接種するには、少なくとも両親のいずれか1名の同意が必要です(少なくともいずれか1名が同意書に記入し、署名する必要があります)。16歳以上のワクチン接種には、親権者の同意は必要ありません。

またフランス政府は、ワクチン接種のメリットやデメリットについて子供たちが学校で学び、主体的な判断を下す必要性も述べている。

Aider les élèves à forger leur propre opinion sur la vaccination
La démarche de se faire vacciner reste un choix personnel, sous réserve de l’autorisation parentale pour les mineurs de moins de 16 ans. L’Éducation nationale doit toutefois, sans être prescriptive, contribuer à éclairer cette décision.
Les enseignants qui le souhaitent sont invités à animer un débat au sein de leur classe en présentant les avantages et les inconvénients, directs et indirects, de la vaccination en général, et contre la Covid-19 en particulier.
Des ressources sont mises à disposition des professeurs sur le site Eduscol.

(筆者訳:ワクチン接種に関する生徒の意見形成を支援

ワクチンを接種するかどうかは個人的な選択です。ただし、16歳未満の未成年者の場合は、親の許可を必要とします。教育現場は義務づけをすることはできませんが、子供たちがワクチン接種に関して主体的に意思決定をできるように手助けをしなければなりません。
希望する教師のみなさんは、ワクチン全般や、とりわけ新型コロナウイルスワクチンを接種することの直接的・間接的なメリット・デメリットに関する議論をリードしてください。
Eduscolのウェブサイトでは、教師のみなさんのための資料を用意しています。

なお、同意書はフランス政府のウェブサイトからダウンロードすることができる。同意書には、親のサインや個人番号、新型コロナウイルス感染歴を調べる抗体検査及びワクチンを子供に受けさせることに同意するかどうかを記載する欄などがある。

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結論

フランス政府は未成年の新型コロナウイルスワクチンの接種を強く奨励している。しかし、12歳から15歳の子供のワクチン接種には片方の親の同意が必要であり、接種は義務ではなく個人の自由だと繰り返し強調されている。保護者の同意なしに子どもたちにワクチンを接種する予定があるとはどこにも書かれていない。チェック対象のツイートは「誤り」である。

(冒頭写真:該当ツイート)

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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