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【FactCheck】「家が全壊した人への補償より旅行支援のほうが高い」は誤り

【FactCheck】「家が全壊した人への補償より旅行支援のほうが高い」は誤り

能登半島地震から1ヵ月余経っても被災者が厳しい状況に置かれている。こうした中、被災者支援より能登半島への旅行支援の方が金額が大きいという情報がネットで拡散した。しかしこれは誤りだ。

対象言説 「家が全壊した人への補償より旅行支援のほうが高い国

X(2024年1月25日)

結論 【誤り】

「家が全壊した人への補償より旅行支援のほうが高い国」は誤り。旅行支援の「北陸応援割」は1人1泊につき最大2万円だが、家が全壊した被災者には少なくとも100万円が支給される。加えて、再建する場合は更に200万円が支給される。

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

Xに投稿されたフリップボードの写真は、2024年1月24日の参議院予算委員会で、れいわ新選組の山本太郎議員が用いたものだ。ここで、山本議員は、岸田文雄首相に災害救助法における生活必需品の支給限度額を早急に引き上げることを求め、秋田豪雨(2023年7月14~16日)の被災者の現状を取り上げた。では、この「全壊→1万9200円」とは何だろうか?

災害救助法における生活必需品の支給について確認した。内閣府の防災情報のページ「災害救助法の概要(簡易版)」からのものだ。

これは「被服、寝具その他生活必需品の供与又は貸与に係る救済費用の限度額」となっており、ここに山本議員が示した「1万9200円」が「一人世帯」「夏季」として記されている。つまり、Xに投稿された写真は秋田豪雨で被災した人への生活必需品の供与限度額である。能登半島地震は2024年1月1日の「冬季」に発生したことから、家が全壊した1人世帯の場合、31,800円を上限に生活必需品の支給を受けることができる。

一方、Xが指摘する政府の旅行支援金とは、被災者の生活と生業を支援するために観光客を北陸に呼び込もうと行われる「北陸応援割」のことで、旅費が50%割引され、1人1泊2万円で2泊以上だと3万円が補助される。上記の通り、今回の能登半島で「全壊」被害を受けた被災者への支援は3万1800円ということで、「北陸応援割」より多少は上回っているのだが、これだけなら、Xの投稿は理解できる。

しかし、家が全壊した被災者への支援は災害救助法だけではない。あくまで災害救助法は、震災後の応急救助期に対応する主要な法律である。政府がまとめた「令和6年能登半島地震 被災者の生活と生業支援のためのパッケージ」によると、「今般の災害における被災者生活再建支援法の適用について、石川県においては、多くの住家が失われた被害状況を踏まえ、個別の被害認定調査を待つことなく速やかに決定したところである。その他の適用地方公共団体も含め、同法が適用された地方公共団体において、住居が全壊した世帯等に対して最大300万円の被災者生活再建支援金を迅速に支給する。」となっている。

つまり、家が全壊した場合の住宅再建の支援には、被災者生活再建支援法が適用される。このため、家が全壊した世帯には基礎支援金100万円に加えて、再建に関してさらに加算支援金200万円があり、合計300万円が支給されることになる。また、2024年2月1日に首相官邸で開かれた能登半島地震復旧・復興支援本部の初会合で、岸田首相は被災世帯に最大600万円の支援ができる制度設計をすると発表している。

以上の事から、Xの「家が全壊した人への補償より旅行支援のほうが高い国」は誤りと判定する。

(馬場玲妃)

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